第9章 お手入れ

903.季節の衣替え

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季節の先取り(季節に先がける)

古来よりきものの柄には、お正月に梅や桜の花柄を着て春の陽気を待ちわびたり、夏の着物に桔梗や萩などの秋草を配して清涼感を与え、一足早い季節感を楽しむ風情があります。衣替えは材質を第一に考えますが、色や柄も考慮に入れましょう。

着物長襦袢羽織・コート帯〆帯上半衿
1月袷(無双)冬物羽織・コート冬物塩瀬
2月袷(無双)冬物羽織・コート冬物塩瀬
3月袷(無双)冬物羽織・コート冬物塩瀬
4月袷(無双)冬物羽織 単衣冬物塩瀬
5月単衣冬物紗・絽 レース冬物塩瀬
6月単衣絽・紗・麻夏物紗・絽夏物
7月うすもの絽・紗・麻夏物※※※夏物
8月うすもの絽・紗・麻夏物※※※夏物
9月単衣絽・紗・麻単衣紗・絽冬物塩瀬
10月単衣冬物羽織 単衣冬物塩瀬
11月袷(無双)冬物羽織・コート冬物塩瀬
12月袷(無双)冬物羽織・コート冬物塩瀬

※袷(無双)・・・無双(むそう)仕立ての意味で、袖など外見は袷に見えても、実際はひとえに仕立てたもの。

衣替えは、古くは後醍醐天皇のときにその記録が残っています。(旧暦)

→綿入れ→4月1日(綿ぬき)→ひとえ→5月5日→夏物→10月1日(綿入れ)→

今の慣例は明治維新に公布されました。どこまでも京都・東京を中心に決められていたようです。北海道と沖縄では、1~2ヶ月間のズレがあるでしょう。また、空調機器も完備し、温暖化した気候のもとでは、新たな衣替えの基準が 必要と感じられます。真冬にミニスカートを着る現代では、こだわりすぎるのも考えものですが、礼節を重んじる場には必要な知識です。

きものがもつ魅力のひとつには、美しく移り変わる日本の四季、「春夏秋冬」を愛する心があります。花鳥風月、雪月花をうたい、心の風情を文字や音声によって表現するのが 和歌や短歌であるなら、きものはまさにこの美的描写の映像版とも言えるのです。しかも、そこには女性として、その折々の 心構えと無言の情趣性が込められているのです。季節の先取りという象徴的なお洒落感覚にも、このように日本的で繊細な思慮深さをうかがい知ることができます。

「知らないと後悔する着付け教室の話」が集英社に取材されました

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