浴衣は着たことがあるけれど、その他の着物は成人式や結婚式以外には着た事がない。そんな方が多いのではないかと思います。
そこで、ここでは浴衣の次に着るきものについて解説します。
左の写真は、着物で夕食に行かれたときのようすです。ここまで着こなすには、少々経験が必要ですが、(1)きものが高い、(2)普段は着にくい、(3)着る機会がない、(4)手入れが大変、そんなイメージを払拭(ふっしょく)できればと思います。
昔なら、普段着や街着(まちぎ)と呼ばれた、木綿や紬、小紋を着て、帯は名古屋帯を結んでいます。
下段左:木綿のきもの+塩瀬の名古屋帯
下段右:小紋
上段左:黄八丈(紬)+名古屋帯
上段中:木綿のきもの+半幅帯
上段右:牛首紬+ちりめん帯
木綿のきもの
木綿のきものは、ひとえに仕立て、裏はついていません。価格は、反物(たんもの)+仕立(したて)=37800円。浴衣とほぼ同金額で出来上がります。帯は、正絹の博多帯でも半幅なら10000円前後。数十年も着られる事を考えれば、決して高いものではありません。
木綿のきものには、縞や格子など独特の絣柄があり、久留米絣、備後絣、伊予絣(以上日本三大絣)、小千谷、松坂、出羽、弓浜など数多くの産地があります。 浴衣の次に木綿を取り上げたのには、以下の理由によります。
・家庭で洗濯が出来る
・着心地が良い(麻と同じく、天然繊維であることから)
・安価である(ひとえ仕立で十分)
・じょうぶ(ジーンズ感覚で着られる)
お値段は、一般的に木綿→小紋→紬→牛首紬とあがります。もちろん高級品にはキリがありません。袷のきものでは、小紋なら7~10万円、紬なら10~15万円はかかります。牛首紬は、超高級品です。
お仕立の際には、ひとえ仕立をお勧めします。 真夏の暑い時期と、真冬の極端に寒い時期を除けば、長襦袢や上着を工夫すれば十分適応できます。
この考え方には、多くの批判もあるでしょう。従来の衣替えのしきたりでは単衣(ひとえ)は6月と9月の2ヶ月に限定されています。しかしテキストでも紹介しておりますように、沖縄から北海道まで全て同じようなTPOを当てはめる事自体、無理があります。昔とは気候が変わり、冷暖房設備も整い、真冬にミニスカートをはくことを考えれば、もっと自由に風土や生活に密着した着こなしをするべきだと考えています。
化学繊維のきもの
ポリエステルに代表される化学繊維(化繊とも言う)のきものには、少なからず根強いファンがおられます。呉服の総生産量に占める割合は3%程度だと思いますが、きものが高額品として敬遠されがちな昨今、化学繊維に消極的なスタンスを取ること自体、すでに非難の的になりかねない危険な状況です。
化繊のきものには、それなりの価値と意義がありますが、入門者が安易な気持ちから揃えはじめることには賛成できません。なぜなら、絹や綿、麻などの着心地は、最初に体感して欲しい素材ですし、何より絹を着たときの充実感(満足感)は他では味わうことが出来ないからです。
しかし、それはどこまでも消費者であるあなたが決定されることで、もちろん異議はございません。