「きものは着たいけど、どんなきものから着たら良いのかわからない?」
この章では、入門者の素朴な疑問に、準備の仕方から、そろえ方、予算について解説しています。
上の写真は、きもので遊ぶ:秋の園遊会の一場面です。お母さんの娘時代のきものを着ている方もたくさんおられました。
(1)タンスの中から
まず最初に、長襦袢を見つけましょう。母や祖父母の着物にも案外良いものがあるかも知れません。モス(ウールのこと)の長襦袢や、裏のついた袷の長襦袢でもかまいません。
次に着物。ウール、木綿、小紋、紬が、あれば大成功。そして、半幅帯や名古屋帯をさがしましょう。冠婚葬祭には着ない着物を選びます。着付用の小物が見つかれば、ひとまずお借りしても良いでしょう。
※タンスのない方、また、きものの準備ができない人も心配いりません。 (3)へ進みましょう。
(2)まずは着てみる
きものには、うつり、地味派手、寸法、組み合わせ、好き嫌い、呉服屋さんとのお話、また、たくさんの思い出が一杯詰まっていることでしょう。ここでは、すべて後回しにします。そして、下着から手順通りに着てみて下さい。
◎下着→長襦袢→着物まで、きちんと腰紐を締めます。
あなたの身長が158cmまでなら、多くの場合、何とか着られるはずです。つまり身長の差が10cm程度あったとしても、着られるのが着物のメリットです。しかし、これで満足したらいけません。どんなに練習しても、寸法の合わない着物は綺麗に着ることはできません。
着方が良いのか悪いのか、取りあえずそれは後回しにして、きものと自分の体型とがマッチしてるか確かめましょう。チェックポイントは以下の通りです。
・長襦袢と着物の寸法は、合っていますか?
長襦袢の裾(すそ)線の位置をメモしておきます。
袖口から長襦袢が出ていませんか?
・裄(ゆき)は、十分ありますか?
・身幅は十分ありますか?
・おはしよりは、十分ありましたか?
・その他。違和感がありませんか?
これらの着物の裄や身丈を修復するには、有る程度の知識と経験が必要です。その場しのぎで修復を繰り返し、ちんちくりんな着物揃え(きものぞろえ)にならないためにも、きもの寸法をきちんと身につけましょう。
(3)スタートラインはきもの寸法
着てみて、はじめて自分の寸法が実感できます。ここが自分のきもののスタートラインです。
・身丈=身長+5cm
・着丈=背中心の背骨のぐりぐりから足のくるぶしまで
・ゆき=背中心の背骨のぐりぐりから手のくるぶしまで(斜め45度にします)
もし、これからあなたが本当に着物を着る気なら、最適寸法を割り出し、正絹の長襦袢を一枚作られることをお勧めします。もちろん、古い長襦袢を洗い張りをして、仕立直しをしてもかまいません。でも、価格的には、ほとんど変わらないでしょう。
ではなぜ、ポリエステル、仕立上がり品、譲り受けたものではダメなのでしょうか。
■既製品(仕立上がり品)は、どこまでも標準寸法です。最初の一枚が標準寸法でスタートすれば、あとから作るきものは、すべてその標準寸法に合わせなくてはならなくなります。 それに現在ではまだ、着丈は長め、裄は短いことが多いようです。売り手側、生産者の論理が消費者のニーズに合っていないと感じています。あとから修正するには、莫大な費用と労力が必要です。 きものを着ない生産者に、的確な商品を期待するのは所詮(しょせん)無理なのかも知れません。
■ポリエステル(化学繊維)の長襦袢も、一枚はあっても良いでしょう。でも、初心者こそ、最初に絹を着るべきです。中国シルクのお陰で値段にも差はなく、一万円で買える時代が来ています。もし、予算に余裕があれば、家庭で洗える正絹襦袢(Washable)は一度着たら離せません。絹は自宅で洗えないからとか、高いとか、色々聞きますが、それは正しいアドバイスではありません。着心地、歩き安さ、暖かさ、TPOなど、すべてを考えた上で正絹をお勧めします。いずれは着たくなくなるのが化学繊維のきものです。 普段に着たい人には、綿や麻の襦袢もお勧めです。これらは二枚目の襦袢です。
■仕立は、命。 近年、低価格の中国縫製やミシン縫製をよく聞きます。確かに、めったに着ない人やプレタ(仕立上がり)の浴衣など、それ相応の着方なら良いかも知れません。しかし、それも着心地がわかるまでの話です。着込むほど、縫い方に注文がつくのは自然の流れです。
■どこで作ればいいのでしょうか?
◎きものを着ている店員さんがいるお店
◎綿、麻、小紋、紬など普段に着るきものがたくさんあるお店
◎その場で長襦袢を試着し、採寸してくれる店
◎店よりも商品よりも、最初に店員を選ぶことが大切です。
◎お仕立て方は、バチ衿で、関西仕立てとお願いして下さい。
◎怒りが爆発を参考にして下さい。
■ゆずり受けたものは?
体型がほとんど同じでも、30年前と今では仕立寸法が大きく変わっています。もし予算の関係上、どうしても無理なら、長襦袢を修復しましょう。でも、反物の幅が狭かったり、着丈の短い襦袢をお直しするのは、すこしだけ和裁の知識も必要です。特に最初の一枚目に神経をとがらせるには、私自身多くの苦い思いがあるからに他なりません。
最初の一枚目(長襦袢)がきちんと出来れば、後は少々融通がききます。我慢もできます。
きもの寸法は、初めが肝心です。