加賀友禅の魅力は、貴族趣味的な品格、そして何と言っても繊細な色彩と上品な趣にあります。写実的な描写は実は空想の世界のもので、たとえば梅の木に桜の花が咲き、しだれ桜に椿の花が咲く、と言うような抽象表現によって描かれています。
もっとも代表的で不思議な特徴の一つに、「虫食い」表現があります。今を盛りに咲き誇る絶頂期の花の描写の中に、なぜか虫に食われた葉っぱがポツリ……人の世のはかなさ、哀調をおびた風情には仏教思想と深いかかわりが伺えます。
図案の作成から色ざしまで一人で描きあげる加賀友禅には、その独自の伝統によって、作者の意図がより鮮明に表現されているのです。加賀友禅は、きものの中でも特に高級品で、振袖、留袖、訪問着など100万円以上の商品も珍しくありません。また、加賀友禅は、その名の通り、九谷焼、輪島塗などとともに石川県(金沢市近郊)で生産されています。